平岡公園- 住宅街に囲まれたオアシス -

「ひらおか春の湿生植物観察ツアー」(6月19日開催)

2022.06.19

本日6月19日、「ひらおか春の湿生植物観察ツアー」開催しました。

朝、平岡公園周辺では雨が降っていたので集まりが心配でしたが、17名にご参加いただきました。

通称「湿地ツアー」は、湿原の専門家である矢部和夫先生によるガイドで、園内の湿地をめぐります。

矢部先生による本日のコース説明

矢部先生による本日のコース説明

上流湿地と呼んでいる春にミズバショウが沢山見られる木道からまわり、人工湿地を見て、2つの湿地の違いや湿地の植物を観察します。

「湿地ツアー」ということで、今回新たに用意した資料もどっぷり湿地まみれにしてみました。

ということで、この報告も湿地の植物メインでお届けします。

 

梅の香橋の下に見える上流湿地はヤナギ林の湿地です。木道に降りてすぐからミゾソバ、セリとドクゼリ、カサスゲの説明から始まりました。

ミゾソバは、葉の形から牛の額(ひたい)と呼ばれることもあります。先生曰く「金平糖の花」。8月頃にはピンクの可愛い花が咲きます。

ドクゼリの説明

ドクゼリの説明

ドクゼリの地下茎を見せてもらいました。セリとは異なり、ワサビのような大きい地下茎です。

そして、おさらい。カサスゲは頂部に雄花1つ。オオカサスゲは大型のスゲで、頂部に雄花が3から7つ。今日でしっかり頭に焼き付きました。

ミズバショウや、市内で見られる場所が少なくなったエゾノリュウキンカ、チシマアザミとコバナアザミのややこしさ、などのお話を聞いたり、ツルニンジンの葉っぱの匂いを嗅いでみたりしながら上流湿地を見ていきました。

ちなみに、矢部先生はツルニンジンはコーヒー牛乳の匂いがすると言っていました。

途中でオオルリの声が。見たいけれど、見つからない。思わせぶりな鳥です。解散後でしたが姿を見ることができましたよ。遠くて写真を上手く写せなかったので掲載は自粛します。

オオルリを探す

オオルリを探しているところ

 

そして脱線ついでに補足情報です。オオダイコンソウは葉の付け根にある托葉が大きく、似た種のダイコンソウの托葉は小さいです。次は自信を持って見分けられるでしょうか。

オオダイコンソウの見分け方

オオダイコンソウの見分け方

では、湿地の話に戻ります。

人工湿地の水位や水質は、人工池で調整しています。上流湿地の沢の水を分水して人工池に流し、人工湿地へは直接水はいれません。そうすることで貧栄養な湿原に近い環境を作り出しています。当たり前のように見ている人工湿地ですが、自然に近い湿原環境を創るために、水位や水質を調整したり植生管理を行うなど、様々な工夫や手間がかけられています。この「湿地ツアー」では、そのような人工湿地の裏側も知って頂きたいというのも狙いとしてあります。

人工湿地へ水を引く堰

人工湿地へ水を引く堰

人工湿地が見渡せるビューポイントで、人工湿地についての説明です。

人工湿地ビューポイント

人工湿地ビューポイント

人工湿地は、皆さまおなじみの「平岡どんぐりの森」さん、教育機関・研究者、札幌市、平岡公園指定管理者が協力して維持管理をしている場所です。この場所は元々水田など耕地として利用されていました。公園内の景観を多様にするため、上流湿地とは異なる泥炭地型の湿地景観を作ることを目標に造成が始まり、2000年2月に基盤工事が完了しました。

湿原の植物を導入しながら定期的にモニタリングを行い、その結果に基づいて管理方法の見直しを図りながら維持しています。造成から6年目くらいから湿原種が増えてきました。2001年に導入した湿原種が極端に増え、2016年調査時には自然の湿原とは異なる種組成に落ち着いてしまいました。現在は2008年に導入した種が増えてきているようです。そして、コロナ禍の影響によりモニタリングやヨシ刈りができないうちに、すっかりハンノキが増えました。今後は、調査でどう変化したかを記録して、原因を分析し、増えてしまった木本類への対処が課題です。

このように順応的に維持管理されている人工湿地を、皆さまにも楽しんでいただけたらと思います。

さて、難しそうなお話はここまでとして、人工湿地でご説明いただいた植物をザっと挙げておきます。

今はスゲ類が見頃です。湿原じゃないと見られないスゲ類もしっかり育っています。この他に「これが生えていれば立派な湿原」というムジナスゲもあります。

フトイやイヌイの花も見られました。

ヒツジグサもちょうど花が咲いていました。クロバナロウゲはちょうど見頃、ヤナギトラノオはそろそろ終わりです。

途中、強い雨が降ってきてしまい、東屋に一時退避し、人工湿地の説明や質問を受けたりしました。少し雨が弱くなってきたところで再び人工湿地へ。

下の写真の手前の方、ハンノキが育っているの分かりますか?

人工湿地の説明

雨が降る中、人工湿地を熱く説明

スゲ類などマニアックな植物にも興味を持っている方が多く、スタッフも楽しい時間を過ごせました。矢部先生も食いつきの良い皆さんで、喜んでおられました。

本日は天候の悪い中、ご参加頂き本当にありがとうございました。

 

最後に、そんな皆さまにイヌスギナとミズドクサの茎の比較をお届けして終わりにしたいと思います。

人工湿地で見たイヌスギナは、茎が少ししっかりした感じでしたね。上流湿地の方で目立つミズドクサは、触ると「へにゃ」っとなる感じです。茎の感触の違いは、切ってみると一目瞭然です。ミズドクサの茎は空洞になっています。

イヌスギナとミズドクサの見分け方

イヌスギナとミズドクサの見分け方

 

肩肘張らない矢部先生のお話は、どなたでも楽しめる内容となっております。矢部先生の湿地ツアーは年に1回ですので、来年はお見逃しなく。本日ご参加の皆さま、来年もお待ちしております。